蒲原鉄道 七谷 1982年
朝も夜も一人きりの駅長は、そのたびに律儀に白い手袋をはめて列車を迎えた。
( 写真展漫遊録 )

東京都写真美術館に「杉本博司 ロスト・ヒューマン」を見に行く。
「海景」シリーズが代表作ながら、写真家の範疇に留まらぬその多才ぶりが妬ましい程の「世界の杉本」である。
写真展を見に来たはずがいきなりガツンと食らうのは、「世界の終末」をイメージした何とも重いインスタレーション群。
「蜂蜜を搾取される事にとうとう気付いた蜜蜂が生きる事を止めた世界」
「自由とは自由の不可能性に支えられて理想になり得ると悟った自由主義者」
「人ゲノム遺伝子情報が解読し尽くされ、一生のスケジュールが確実に予測できる未来」
「草食男子に覆い尽くされて子供が生まれなくなった世界」
その数33点。
古美術品の収集家とも聞いていたが、錆びついた琺瑯看板やら破れかけたポスター、旧日本海軍潜水艦の自爆装置、
果てはダッチワイフまで持ち込んだ作品群に沈黙させられた後は、スクリーンと映写機を持ち込み、映画一本分の長時間露光で捉えた劇場の廃墟。
無数の物語が累積された光は何を映すか。
最後は「仏の海」と題された自然光撮影による三十三間堂の仏像群。仏は末法思想に抗し衆生を救うため祈り続ける。
千年の昔から現代まで尽きる事の無い「世界の終末」のイマジネーション。
人類と文明が遺物になる前に、アートは何を伝え得るか。少なくとも写真とは写真の為にあるのではないと聞いた気がする。
入場料千円を高いとみるか安いとみるか。それは、あなた次第です。
HPはこちら
「風太郎の1980年田舎列車の旅」Copyright © 2014 風太郎のPな日々 All rights reserved
「ブログ村」に参加しました。ご訪問の際はポチしていただけると励みになります!
↓
にほんブログ村
スポンサーサイト