晩夏

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   小湊鉄道  里見    2014年








「晩夏」      木下夕爾


停車場のプラットホームに
南瓜の蔓が匍いのぼる

閉ざされた花の扉のすきまから
てんとう虫が外を見ている

軽便車がきた
誰も乗らない
誰も降りない

柵のそばの黍の葉っぱに
若い切符きりがちょっと鋏を入れる





この詩と出会ったのは中学の教科書だったか。

作者の生家近く、福塩線の前身にあたる軽便鉄道の小駅の情景とされる。

興味の対象はブルートレインでもエル特急でも無く、草生したローカル線一本槍という渋ーい中坊だった風太郎が、

この一編の詩に吸い寄せられたのは言うまでもない。


当時は写真のシの字も知らなかったからそんな視点は持ちようも無かったのだが、

今読み返せば写実的というより写真的な詩だなあと思う。

てんとう虫云々はまるでマクロレンズで捉えたかのようだし、そのまま乗降が空振りのホームにズーミングして、

最後の改札掛の仕草は決定的なシャッターチャンスというところか。

その寄りと引きの妙がまるで組写真を見るかのようだ。

内容からすれば別に初夏でも盛夏でも良さそうな気がするが、「晩夏」のタイトルがまた秀逸だ。

発車していくガソリンカーの響きも小さくなった後、残されたホームの静けさは、忍び寄る夏の終わりのそれであったろう。


詩の世界はこの広い日本の何処かにまだあるはず、それを見ずにはいられるかというのが、

その後の旅の原点だったようにも思うのだ。

それから幾星霜、見たのか見なかったのか定かではないけれど、今もその幻をファインダーの向こうに追ってしまう。


今年も夏は終わりぬ。










上総鶴舞20110828_DSC2577take1b

   上総鶴舞







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「風太郎の1980年田舎列車の旅」

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[ 2017/09/13 23:42 ] 小湊鉄道・いすみ鉄道 | TB(0) | CM(4)