写真展   「 旅のたまゆら  1981-1988 」      その時代②

修正A3 日中線 会津加納駅雪の夜3 1984年2月 16bit AdobeRGB 原版 take1 パース修正前b2

    展示作品より    日中線 会津加納    1984年








こと鉄道というカテゴリーで捉えれば、それは激動の時代だったかも知れない。

永年の国家的課題だった「国鉄債務」がいよいよ看過出来ない事態に陥り、一時的なカンフルにも満たぬ運賃値上げが

1970年代から毎年の恒例行事となる。

国鉄が文字通り国民の共有財産、そして公共の福祉に供するものという役割は急速に失われていった。

1980年、国鉄再建法成立。地方ローカル線(特定地方交通線)の国鉄からの分離・バス転換が明確に方針化される。

ここに全国のレールはひとつという大原則は崩れ、世界でも例を見ない程津々浦々に伸ばされたローカル線の運命は決まったとも言える。

興浜北線、美幸線、赤谷線、日中線、倉吉線、添田線、宮原線、誰も知らない日本の片隅のローカル線の名前が、

廃止対象線区として全国紙の一面トップに踊った。

尖鋭化する労組、全国各地の廃止反対運動、さらには最終目標となる「国鉄分割民営化」に向けて、

鉄道は虚々実々の政治の駈け引きに翻弄される事になる。


1983年の白糠線廃止を皮切りに、1984年3月末には日中線をはじめ7線区でサヨナラ列車が出る。

そして翌1985年までの間に全国33線区が消えた。第三セクター等で生き残った線区もあるにせよ、

全国の路線網は櫛が抜けるように白地が増えていく。

これは民営鉄道においても同様だった。地域の生活路線の廃止というある種のタブーが解かれた事は、

経営難に苦しむ地方ローカル私鉄の地滑り的な廃止にも繋がった。

1984年鹿児島交通、1985年蒲原鉄道村松加茂線、加悦鉄道、1987年筑波鉄道、

個性的な車両や素朴な施設を残した鉄道が次々と歴史を閉じていった。

そして1987年、115年の歴史を重ねた「国有鉄道」は消滅する。

その後やって来るバブルの狂奔の陰で、僅かに生き残ったローカル線もひっそり命脈が尽きていった。



結果的に風太郎の旅は、まさに消えようとしているローカル線の最後の日々を追った事になるようだ。

在るものが消えていく事、そして二度と戻っては来ない事、その喪失の意味を理解するには若きに過ぎたかも知れない。

ただ忙しなく無邪気でもあり、この国の片隅でのめくるめくような出会いに心躍らせる日々だったように思う。

感傷というものが心の狭間に忍び込むまでには、相応の時間も要するらしく。


鉄道のかたちを大きく変えた、この時代における施政の評価を語れば枚挙に尽きないだろう。

前のめりな高度成長の終焉という歴史の転換期にあって、鉄道のみが変わらないというのも不自然なのかも知れない。

しかし時代は今も現在進行で変わっている。何が正しく何が間違っていたのか。

謙虚な反省と修正があることも、歴史とその中で失われたものに対する誠実さだろう。



写真は終着熱塩のひとつ前、日中線会津加納駅。駅員が一人いたが、19時過ぎの最終列車で帰ってしまう。

もう列車は来ないけれど、駅は明かりを灯してそこに在るのだった。

日中線廃止をひと月後に控えた、静かな雪の夜である。






写真展  「  旅のたまゆら  1981-1988  」    モノクロ 約70点 

◯ 開催期間  2016年8月16日(火)~8月29日(月)  (21・22日は休館日)

◯ 開場時間   10時30分~18時30分  (最終日 15時まで)

◯ 場所     新宿ニコンサロン   新宿区西新宿1-6-1  新宿エルタワー28階   (新宿駅西口より徒歩5分)  









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「風太郎の1980年田舎列車の旅」

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[ 2016/08/08 20:05 ] 写真展 | TB(0) | CM(6)

風太郎様

日中線廃止をひと月後に控えた、静かな雪の夜である・・・
この場所に行ってこそですね
行って撮影してこそですね
撮影したネガを大事に保存してこそですね
撮影当時は現在のようにフィルムをデジタル化してネットで配信するなど到底考られない時代だったのではないでしょうか・・・
それが写真展に展示されるとは想像出来はしなかったのではないでしょうか・・・
[ 2016/08/08 22:47 ] [ 編集 ]

近くて遠い時代


りらさま

「スマホ? なにそれぇ。」というY!mobileのCMではありませんが、
インターネットは宇宙旅行以上に想像不能でしたねえ。
自分の思い出以上に何の欲も無く、他人に見せる事など露ほども思いませんでしたから不思議なものです。
その時の雪へのズボリ具合まで結構覚えているんですけどね。(雪に踏み跡付けなきゃ良かったと今更思いますが。)
不思議に近くて遠い時代です。ちなみにCMの「ナウいぃ。」は1980年当時でも死語とされておりました。念のため。
[ 2016/08/08 23:22 ] [ 編集 ]

雪のトーンが、

風太郎さま

あの日の一枚ですね!?
駅員が帰っても灯りがともる駅が周りの雪によって
さらに浮かびがる厳かな雪の夜。
なんとも神秘的で好きですよ。
[ 2016/08/09 22:21 ] [ 編集 ]

ラストカットの贈り物


狂電関人さま

そうです。あの大伸ばしの一枚です。
その時もお話ししましたが実はこの写真はミスショットで、しんしんと降っている雪の粒を写そうとして滅多に使わぬストロボを持ち出したものの、
このカットだけ発光しなかったのです。長時間露光でブレた雪の粒がスクリーン代わりになって、こういう写りになったのかと想像しています。
これもまあ、「鬼が手伝った写真」ということで。いや日中線のラストカットですから、最後の贈り物?
[ 2016/08/09 23:30 ] [ 編集 ]

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[ 2016/08/10 00:17 ] [ 編集 ]

是非お会いしたいですね。


鍵コメさま

遠路はるばる恐縮至極です。何かのついでであればプレッシャーも薄れるのですが。
小湊とかいかがですかと余計な提案。
27日(土)は確実に在廊しますが、26日は微妙ですねえ。もっと近くなれば確定すると思いますが。
宜しくお願いします。
[ 2016/08/10 00:31 ] [ 編集 ]

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