夕張物語 その8    「私の夕張」

yubari_16250b.jpg









「夕張鉄道」ならともかく、「私の夕張」ってタイトルからして何だよ、立ち読みに開いてみればまた仰天の中身。

1970年代初頭の夕張鉄道と蒸気時代の大夕張鉄道(後の三菱石炭鉱業鉄道線)を捉えた鉄道写真集なのだが、

車両そのものよりも乗客や働く鉄道員のスナップに多くのページが割かれており、特に乗客は通学女子高生のスナップばかりが満載なのだ。

「女子高生図鑑」とも揶揄され、1981年秋の発刊当時は仲間内でもキワモノ扱いされていたのだが、

風太郎は妙に心に引っ掛かるものがあって、3,200円と当時の財力では厳しくも思い切って買ったら、「そんなに見たいのか。」とまた変人扱い。

(只見・会津・日中各線撮り放題の「会津磐梯ミニ周遊券」が学割4千円台で買えた時代だ)








yubari_16255b.jpg

yubari_16251b.jpg

yubari_16254b.jpg






夕張鉄道の自社発注機や大夕張の払下げ96、鹿ノ谷機関区の威容など最末期の炭鉱鉄道の記録として貴重なのは言うまでもないが、

軒を連ねる炭鉱住宅、笑う子供達、学生たちのざわめき、機関区員の作業服の石炭の匂いまで伝わって来る。

それはヤマがまだ生きていた時代の、混沌とした沿線生活のエネルギー。


「女子高生」については決して趣味嗜好の産物ではない事は、後に現地に行ってみて分かった。

人口密度が都会並みに高く、基本的に徒歩圏内で日常生活は充足出来たヤマの暮らしにあって、

「汽車」に乗るのは通学の高校生ばかりで、こめかみに剃りの入った男子は遠慮するなら、写るのは女子高生ONLYなのだ。

(一応男子も若干写っているから風太郎より度胸がある。)







yubari_16258b.jpg

yubari_16256b.jpg







作者の方は地元では無いのだが本当に根を詰めてこの夕張の地に通ったらしく、そのカメラワークは丁寧に大胆にそして温かくヤマの息遣いを伝える。

「その土地やそこに住む人々を愛し、なつかしい想いで語れる場所もふるさとならば、夕張は正に私のふるさとである。」

という後書きは作者がこの写真集に込めた想いだろうし、「私の夕張」のタイトルこそむしろ相応しいように思うのだ。

夕張鉄道最終日、去りゆく列車を見送る少女のラストカットなんぞは鉄道写真を見て初めて泣いた一枚かもしれない。


この写真集から教えられたのは、ある土地に拘り、愛し、鉄道ばかりでなく沿線の風土や生活まで包括した「その土地の物語」を紡ぐ写真の豊かさだ。

後に風太郎が総花的な全国行脚を縮小し、蒲原とか五能線とか特定の線区の撮り込みに拘り始めたのは、

後追いながら「私の◯◯」が欲しくなったからに他ならない。


写真遍歴に出会った中で忘れ難く、撮るべき写真の方向性をも示してくれた一冊。






HPはこちら  
「風太郎の1980年田舎列車の旅」

Copyright © 2014 風太郎のPな日々 All rights reserved


「ブログ村」に参加しました。ご訪問の際はポチしていただけると励みになります!
 ↓
にほんブログ村 鉄道ブログ ローカル線へ
にほんブログ村
スポンサーサイト
[ 2017/06/27 21:50 ] 最近の旅 北海道 | TB(0) | CM(12)

集中力

ある地域に通い詰めると、その場所の素顔が見えてくるものです。
最初はやはりほんの表面しか見えないものですし、その場所に受け入れてももらえないものです。
ちょっとスケールが大き過ぎますが、土門拳の「筑豊のこどもたち」の撮影裏話には驚かせられます。
一時期、通いに集中していたこともありますが、ちょっとご無沙汰になっています。
そうですね。何か掘り下げる題材を持っていた方が、遣り甲斐みたいなものが湧いてきそうですね。
[ 2017/06/27 23:11 ] [ 編集 ]

通い詰めで、見えてくるもの

風太郎さま
これは、また、鉄道情景あふれる写真集ですね。
「キワモノ評があった」とのことですが、きっと、昭和男児の照れ隠しです。本当は欲しかったに違いありません。
通学風景も良いですが、機関区の作業風景の写真に吸い寄せられます。
全体的に柔らかで、優しい描写も、鉄の轟々しい描写になりがちな中、いい感じです。
前にご紹介して頂いた本も含め、昔の鉄道写真集はとても高価だったのことで、
先日の大木さんの復刻本も含め、今はとても恵まれた環境に感じました。
本当は、風太郎さまの「私の○○」を出して頂きたいのです。何とか、お願い致します。
ps >鉄ちゃんの歴史は粗食の歴史 
廣田さんや諸先輩方ほどの切り詰めはしませんでしたが、
朝昼をできるだけ抑え、夕は名物駅弁に全力投資していました。それがまた、旨かったこと。
最近は食べてばかりですね。どうりで、腹の直径が太くなるわけです。
[ 2017/06/27 23:23 ] [ 編集 ]

昨日は、

風太郎さま

久々にヨンマルの旅に約2時間酔いしれました~。
が、途中白金から急にその乗り鉄風情を吹っ飛ばすかのように
八戸線ローカル列車が通学列車に大変身しました。
でも、何だか自分も高校時代に戻ったように何だか微笑ましかったです。
[ 2017/06/27 23:24 ] [ 編集 ]

夕張物語

こんばんわ。
夕張物語、プロローグは静かな滑り出し、次に直球ど真ん中「夕張は倒れたままか」。
幸福の黄色いハンカチは想定内展開なるも、昨夏写真展のあの写真がリニューアル思い出ひろばのキー・ビジュアルのサプライズ、清水沢⇒南大夕張の勘違いオマケ付き。
夕張メロンで転調、ちょいと箸休め。
勘違いが伏線として利いた清水沢今昔物語、リリーズを知る世代だが夕張とは。
そろそろ静かに幕引きかと思ったら「私の夕張」、風太郎さん写真の原点開示の超弩級!。
シナリオメイクの巧みさに、感嘆しきり、ここまでドラマティックだとエンディングが難しいなどといらぬ心配する始末。
これは凄い傑作シリーズです。
[ 2017/06/27 23:48 ] [ 編集 ]

在りのままに


こあらまさま

土門拳は筑豊で嫌われていたという話も聞きます。
炭鉱労働者は基本的に高給取りで当時の平均水準以上の暮らしをしていた、
特殊事情のある貧しい家庭だけを捉えて全体がそうであるかに語るのは迷惑だと。
多面性のある世の中に対し、写真が掛けるバイアスというのもあるのかも知れません。
でもある地域ならではの社会生活というのは確かに在って、その在りのままにどこまで写真が迫れるのか、
基本的にシャイでカメラの操作さえ怪しげなヘッポコピーながら、結構ストイックに逡巡するあの頃だった気がします。
[ 2017/06/28 00:09 ] [ 編集 ]

毒を食らわば


hmdさま

照れ隠しはまああったかも知れませんが、鉄道写真集のくせに人物のスナップが中心というのがキワモノだったんですよ。
今でこそゆる鉄写真を中心に鉄道の写真表現は自由なものになりましたが、当時はストライクゾーンが狭過ぎで。
でもその窮屈さに何かが違うと思い始めた頃、この写真集と出会って目からウロコが落ちたという事です。
昔の写真集は本当に高かったです。「北辺」にしたって初版の1500円が4000円とはいえ、50年間の物価上昇を考えれば。
それでも当時売れたのだから大したものです。代わりに北海道撮影行を諦めたという罪な一冊でもあるようですから。

先日、中学の同窓会に行ったら15年間アルプスのモンブランに通い、その個展を全国のキャノンサロンでブチかました挙句、
写真集まで自慢されれば(一応堅気のサラリーマンです)、オレもまだまだ踏み込みが甘かったと反省。
毒を食らわば皿まで。道楽の極みで写真集でも出しますか。



[ 2017/06/28 00:37 ] [ 編集 ]

通学列車


狂電関人さま

無事のご帰還何よりです。興奮冷めやらぬようですからその余韻をおいおい頂戴致します。
現代のローカル線は高校生専用列車に成り果てているのは遺憾ながら、それでも車内が賑わうなら何処かほっとしますね。
最近風太郎はあまり列車そのものに乗る事が少なくなりました。
窓を開けられる時期のヨンマルに乗って風に吹かれつつ、高校生達を眺めればあの頃に帰れるかとちょっと想像したり。
でも最近の地方高校生は品が良くなったというか、東京と何も変わりませんね。その辺は時の流れです。


[ 2017/06/28 00:47 ] [ 編集 ]

ご縁の土地


lofthonsenさま

思い付くまま書き放題の話に丁寧にお付き合い頂き有難うございます。
実のところ夕張という土地に縁があったのは最近を除けば33年前の一回きり、
それも夕方から入って数時間の滞在、撮った写真もフイルム2本弱というお寒い限りの訪問だったのですが、
その後いろいろ使い道のある写真が多かったのは意外です。
リリーズだって訪問当時はツユ知らず(ツバメ商会はまだあったはず、残念!)、後になって知ったのも不思議なご縁で。
何処かこの土地に籠った念の様なものに後押しされている気がします。

エンディングは・・・そりゃあもう、「勘違い」を回収に行かなければなりますまい。

[ 2017/06/28 01:02 ] [ 編集 ]

なるほど

風太郎さま
>スナップが中心
そうでありましたか。当時は、かなりストイックな状況だったのですね。チャチャを入れた様になってしまい、申し訳ありませんです。
>道楽の極みで写真集
個人的には、風太郎さま定番の「か」とか、「こ」の鉄道だと、感激もひとしおです。
男のロマンでかっこいいですね。いつかそんな日が来ると、期待しております。
[ 2017/06/28 05:01 ] [ 編集 ]

風太郎様

後追いながら「私の◯◯」が欲しくなったからに他ならない・・・・風太郎様のお写真の原点ともなった写真集なのですね
確かに魅力ある写真の数々ですね
夕張鉄道最終日、去りゆく列車を見送る少女のラストカットなんぞは鉄道写真を見て初めて泣いた一枚かもしれない。・・・
拝見したかったです

[ 2017/06/28 07:19 ] [ 編集 ]

世界観


hmdさま

そうですねえ、ストイックというか、眼中に無かったというか、
車両そのものに対してピュアな人は多かったのでしょうね。
でもただ車両だけの写真しか撮れないなら、多分早々に鉄道を撮る事を止めていたと思います。
写真集は写真展以上にひとつの世界観を表現できますし、究極の目標ではあります。
まあそのうちに。
[ 2017/06/28 21:01 ] [ 編集 ]

リスペクト


りらさま

小説や映画のネタバレの如く、そこに至るまでのプロセスを味わう事無く結末だけを見せられても興醒めなだけで。
やはり被写体に対する想いや慈しみの遍歴を、そこまでの写真が語った上でのラストカットだと思うのです。
ネタバレしないのは作者の方への最低限のリスペクトなので。
優れた写真集は上質な物語を読み終えたような充足感があるものです。

[ 2017/06/28 21:13 ] [ 編集 ]

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://futaro1980.blog.fc2.com/tb.php/1361-7cec3458