「阿賀に生きる」を見る

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ちょっと前だけど、ドキュメンタリー映画「阿賀に生きる」を見る。


「阿賀」とは「阿賀野川」の事を指す。新聞の小さな紹介記事に吸い込まれたのは、お察しの通り、

昔足繁く通った磐越西線沿線が舞台の映画だからである。

1992年公開、当時この手の映画としては異例のロードショー公開され、ドキュメンタリー部門で

国内外の作品賞を総なめにしたという、伝説的映画らしい。


全編16mmフィルム、撮影だけで金策が尽きたのか、カンパを集めてやっと公開にこぎつけたとの

事だが、当時の三川村にスタッフが3年住み込んで撮影したという執念のような作品。


内容は、鹿瀬町を中心に阿賀野川流域に住む3組の老夫婦の日常を、ごく淡々と追ったものである。

川べりの僅かな田んぼを守る人、餅つき名人、川舟の船大工。子供たちが去り、夫婦二人きりで

決して経済的にも恵まれない境遇なのだが、その屈託のない明るさと、たゆとう阿賀野の流れの

ような穏やかな日々が、映画が進むにつれゆっり心に沁み込んでくる。


田舎の質素な暮らしの中に本当の幸せを見る、などというのは結構ありがちだけれども、農作業

を手伝い、相手が心を開くまで膨大な時間をかけて作り上げた記録は、その努力に比例した説得力を

持っている。2時間近い長尺も必然だったと思う。


鹿瀬といえば、昭和電工による有機水銀の流出を原因とする「新潟水俣病」の発生地として有名であり、

この映画のスタッフも、もともと「公害病告発映画」を撮りに行ったに違いないし、登場人物の中にも

病の影が落ちているのは描写されている。しかし、公害病さえも数多い人生のエピソードのひとつに過

ぎず、それ以上でも以下でもないと穏やかな笑顔の中に消化してしまう人々に接し、もっと大きく、根

源的なテーマに気付いていくプロセスも伝わって来る。


この映画が撮られたのは1990年前後から数年の時期と思われ、それは風太郎が各地のローカル線の変質

に愛想を尽かし、磐越西線をはじめ鉄道にカメラを向ける事を止めた時期と重なる。

そんな点でも、まだこんな「風景」が残っていたのかと、感ずるものがあった。ちょっと期待した磐越西線

の映像は、DD51のホイッスルが効果音として入るばかりで姿を見せず肩透かしなのだが、例の鹿瀬の鉄橋

の俯瞰は頻繁に出て来る。


全編大した起伏も無く、10年以上仕事を止めていた老船大工が突然思い立ったように道具を取り出し、

昔と変わらぬ眼差しで一艘の川舟を作り上げ、阿賀野の流れに浮かべる程度のクライマックスなのだが、

2時間飽きることなく、余韻に浸った。

ある土地に生まれ、そこで生きて死んでゆく人間たちの、逞しい命の輝きへの讃歌。


この映画、10年後に撮られた続編があり(「阿賀の記憶」)、登場人物の多くがこの世を去った後、

残された痕跡を追った映画だという。同時上映されていたが見なかった。時間の都合の他に、かなり

切ない内容と思ったからに他ならない。


極めて地味ではあるが、優秀なドキュメンタリー映像作家の存在と、その仕事に乾杯したくなる、

午後のひととき。


夕日に映える阿賀野の流れ。残念ながら非鉄。


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   新潟県 鹿瀬町  1988年



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[ 2013/02/17 22:37 ] 日々雑感 | TB(0) | CM(2)

磐西詣で

この映画、知りませんでした。

磐西へ行くと、新潟、会津の方々は
本当に良く声を掛けてくれます。
足繋く通う理由の一つかもしれません。

今度私も見てみます。

夕陽に輝く阿賀野川、秀逸です!
[ 2013/02/19 23:14 ] [ 編集 ]

阿賀野の流れ

いぬばしり様

知る人ぞ知る有名な映画らしいのですが、
私も偶然紹介記事を目にするまで存在すら知りませんでした。

全く鉄っ気はありませんが、磐西沿線の山河が好きな人なら一度見て損はないと思います。

商業的には厳しい映画と思いますので、なかなか見るのも難しいと思いますが、
淡々としたドキュメンタリーにも関わらず、下手なハリウッド映画よりよほど感動しました。

私の場合、鉄道より先にその土地が好きになって、という事が多いからかもしれません。
[ 2013/02/20 00:22 ] [ 編集 ]

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