「たのしい鉄道写真の撮り方」

tanoshiib.jpg
「たのしい鉄道写真の撮り方」 廣田尚敬著
住宅新報社  1976年刊



廣田尚敬氏は、風太郎が最も敬愛する鉄道写真家である。

氏の写真についての論評は、また別稿で詳しく語る機会があると思われるのでそこにとっておくことにするが、

ここでは氏の数多い著作のうち、風太郎にとって最も思い出深い一冊について書く。

風太郎は高校生の時に手に取った。


カバーやタイトルからも想像できる通り、本書は廣田氏が子供向けの鉄道写真入門書として著したものだ。

本書が「子供向け」であることは著者も文中で繰り返し強調している。

しかしである。本書を馬鹿にしてはいけない。内容が恐ろしく深いのだ。

Q&A形式で質問に答える形式で編まれているのだが、例えばこんなQがある。


「よい鉄道写真とは何ですか」

「車両が写っていなくても鉄道写真になりますか」

「一発必中の方が良い写真が撮れるって本当ですか」

「ドラマチックな写真を撮りたいのですが」


どうだ。ちったあ鉄道を撮りこんでいる御仁でも即答は難しいだろう。
 
「子供向け」ということで廣田氏もかみしもを脱ぎ、かえって自由にピュアな気持ちでモノが書けたのかも知れない。

Aとして答える行間からは、技術的なハウツーではなく、氏の写真哲学が垣間見える。

鉄道写真といえばナナメ45度、順光線で編成のしっぽまで入れる。そんなお約束がまだまだまかり通っていた

時代に、シルエットでも構わない、雪をかぶった前照灯だけでいい、果ては車両など写っていなくとも良いのだ、

という氏の主張は、写真のシの字を覚えたばかりの風太郎にとって衝撃的だったし、鉄道の写真ってそれほど

自由なものなんだと、目からウロコを落としてくれたような気がする。



_DSC5287b.jpg



ハウツー解説が無い訳でもないのだが、個性的な視点のハウツーが多くて楽しめる。例えば「崖の登り方」。

土の光っているところはやめろとか細かい。ストラップを使った太陽位置の割り出し方だの、子供向けにそこまで

必要かというネタもあれば、傑作は「道の尋ね方」。田舎でよく出会う年寄りはやめろという。「彼らは我々と距

離感が異なり、すぐそこじゃよ、がひと山向こうの可能性がある」。同年代の子供に聞くのが良いのだという。

極めて実戦的だ! 締めは「体力こそ重要」。腹筋運動30回出来ればお許しが出るようだ。30回の根拠は一切

不明だが。


_DSC5288b.jpg




その後氏が「大人向け」に書いた本も読んだが、単なる技術論で全然面白くなかった。

「たのしい鉄道写真の撮り方」は、穴が開くほど読んだのだろう、真っ黒に手垢がついている。

そして裏表紙には、風太郎が秩父鉄道で初めて鉄道にカメラを向けた時のデータが鉛筆で記入してある。

本書は風太郎にとって鉄道のみならず写真への目を開かせてくれた宝物だ。

もちろん絶版だが古本はかなり出回っている。「撮り鉄」はもちろん、鉄道写真など興味は無くとも

どこか示唆を受けるところがあると思う。一度読んで損はなし。




HPはこちら
「風太郎の1980年田舎列車の旅」

Copyright(C)2011  FUTARO1980. All rights reserved


「ブログ村」に参加しました。ご訪問の際はポチしていただけると励みになります!
 ↓
にほんブログ村 鉄道ブログ ローカル線へ
にほんブログ村


スポンサーサイト
[ 2013/07/07 23:14 ] 日々雑感 | TB(0) | CM(10)

巨匠の声

風太郎さま

やはりバイブルを読んでいましたね!

中坊から高校にかけて巨匠の写真に憧れて、
どれだけ記録写真を棒に振ってまで実践してきたか。
とはいうものの大して腕は上がりませんが(笑)
[ 2013/07/08 10:35 ] [ 編集 ]

風太郎様

「たのしい鉄道写真の撮り方」 廣田尚敬著
風太郎様のご説明が まるで本のようです

「創作か記録か」
鉄道写真ならずとも 興味が湧きます
「技術も大事だが それ以上に感性が大事だということが理解出来ると思う」
と書いてあるように思えます
歌手のことも事例として書いています
この一頁だけでも この本が風太郎様の大事な
宝物だということが 理解に及びます

[ 2013/07/08 20:21 ] [ 編集 ]

とてもおもしろく拝見いたしました。
風太郎節(すみません)とでも申しましょうか、その気にさせるのがお上手ですね!
私は撮り鉄ではありませんが、かなり読んでみたくなりました。
[ 2013/07/08 21:52 ] [ 編集 ]

シャッター以前の

狂電関人さま

当時カメラの操作から本当に知らなかったので、
小難しい本よりとにかく簡単そうなのをと手に取ったのが運命の分かれ道。

技術よりもシャッター以前の心を教える、ある意味難解な本が子供向けというのも皮肉なものですが、
今巷に溢れる「撮り鉄指南本」に決定的に欠けているものがここにあると思っています。

この深い教えを中学生の頃から「実践した」というのが何気に凄い。
[ 2013/07/08 22:17 ] [ 編集 ]

オリジナリティ

りら さま

本の文章まで読んでいただいて恐縮です。ちゃんと下まで写すべきでしたね。反省。

「撮り鉄」の世界に限らず、写真の指南書というものはあまりにマニュアル化し、
読む側もそれに追従することに汲々としているように見えます。
この本の素晴らしさは撮影技術以前の心の在りようと、オリジナリティの大切さに
目を開かせていることです。

写真事始めの時代に、そんな一冊に出会えたことを幸せに思います。



[ 2013/07/08 22:44 ] [ 編集 ]

これは

珍しい本をお持ちですね。
廣田さん本人はお話していると、実に気さくで、
「神様降臨」と思っている私なんてかえって緊張
しまくりなんですが・・・。ある意味永遠の鉄道少年
です。大木茂さんもそういうところがあります。
電車シリーズもそうですが、子供向けの本の方が
実にストレートで考えがそのまま出ていると
思いますね。私の愛読書「四季のSL」も一般向け
(素人向け)ですので技術論は一切無し。
[ 2013/07/08 22:56 ] [ 編集 ]

写真事始め

いろもりカラスさま

いろいろ書き散らすのは好きですのでいつまでも続きますよお、風太郎節は。

カメラ機材が発達して、誰もがシャッターさえ押せばそれなりの写真が撮れる時代、
その人にしか無い感性に基づくオリジナリティが何より大切になっていると思いますし、
そもそも何処かで見た様な写真ばかりじゃつまらないじゃないですか。

いろもりカラスさんの日々の奮闘も時に微笑ましく、時に学ばされます。

事始めにあたっては「模倣」も実は大事だと思うのですが、オリジナリティを求める心がある限り、
必ずいろもりカラスさんの感性が滲み出る様な写真が撮れると思いますヨ。

「撮り鉄」で無くても全く違和感なく読めるところがこの本の偉大さですので、機会があれば古本でも。
[ 2013/07/08 23:03 ] [ 編集 ]

廣田エッセイ

マイオ さま

廣田さんや大木さんという大御所の方々と対話されているとは、もう羨ましい限りです。

廣田さんは写真もさることながら、実は文章がそれ以上に好きなのです。
「四季のSL」もそうですが、写真集に必ず添えられた旅のエッセイは、鉄道ばかりでなく、
出会った人々や自然、歴史など多彩な切り口で旅への憧憬をかき立てられたものです。
写真が一枚も無い、エッセイのみを集めた本「SL讃歌」(蝸牛社)も持っている位です。

いろいろな意味で天才です。廣田さんは。
[ 2013/07/08 23:17 ] [ 編集 ]

この本 我が家にもあります。某誌の書評に「ここまで手の内を公開してくれた廣田氏の懐の深さに敬服」とありましたっけ。刺激になる内容でしたね。シルエットの時の露出テクニック「太陽がぎりぎり入らないのようにして、1絞りオーバー」はまだまだ現役です。
[ 2013/07/10 13:03 ] [ 編集 ]

廣田本

mc43810 さま

「廣田本」のなかではキワモノと思っていましたが、皆さん結構読んでいますね。
「手の内」と言う程テクニカルな話が多いか?と思ってしまいますが、
当時としては珍しかったんですかねえ。

ところで、「64」はまだ撮っていますか?
[ 2013/07/10 22:04 ] [ 編集 ]

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://futaro1980.blog.fc2.com/tb.php/540-3db603ca