DISCOVER  JAPAN  ②

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図録より





「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン」の会場には、このキャンペーンの主要メディアとなった「駅貼りポスター」の実物が、

見事な保存状態で多数展示されている。

長きに渡ったキャンペーンの中で、ビジュアル表現はかなり変遷しているのも分かる。

最も先鋭的なのは、やはり第1クールと呼ぶべきスタート当初、毎月更新されたポスター類だろう。

いかにして絵葉書と距離を置くかに苦心しつつ、心の襞を共感させるようなビジュアルに仕上げるか。

クリエイターの腕の見せ所でもあったが、苦悶の跡も見て取れる。

象徴的な「ブレボケ写真」、実はこれほど撮るに難しい写真は無かったようで、

ワンカットを残すのにダンボール箱一杯のネガが必要だったという。



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図録より




キャンペーンの進行につれ、何となく俗っぽくなる事も有れば、原点回帰するようなところもあり、

これは制作スタッフが途中で変わっているからとの事だが、やっぱり広告の制作現場というのは、

極めて属人的な感性に支えられているものと再認識する。


広告である以上、やはり実売に結びつけなればいけないから、ロゴを配した様々な派生商品が作られ、それらも大量に展示されている。

風太郎の貧乏旅行を支えた「周遊券」もこのキャンペーンと共に大量に生まれたのだろうか。

各地の生活路線の集積に過ぎなかった「日本国有鉄道」が、プロダクツやチャネルも含め、

「旅のマーケティング」に初めて目覚めた軌跡なのかも知れない。






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図録より




くだんの「スタンプ台」も実物が展示されていて、あったあったと懐かしい。

これは最近廃止された岩泉線の岩泉駅に、廃止の日まで置かれていたものという。




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図録より




この展示でひとつ感心したのは、こんな面白いキャンペーンがありました、という通りいっぺんの紹介では無く、

時代のムーブメントとしてこれに刺激された様々な文化論、芸術論の拡がりにまで踏み込んでいる事である。

「DISCOVER  JAPAN」、実は知識人、文化人とされる人々からは、当時結構批判を浴びたらしい。

都会の若い女が田舎に何かを発見しに行ってやる、という上から目線、

所詮広告発信者の目というフィルターが掛かり恣意的に矮小化された「発見」でしかない、

果ては「美しい日本と私」というサブコピーが災いしたか、これはナショナリズムの高揚を狙った政治的唯美主義云々。

(蛇足だがこのコピーに近いフレーズの連呼は、ごく最近散々聞かされた気がする。アレはコレのパクリか?)


北井一夫氏はアサヒカメラ誌上において、「DISCOVERED JAPAN」という何とも挑発的なタイトルで、

「発見される側」、つまり「田舎の人々」のリアルを次々とカメラに収めてその答えとする。

氏の木村伊兵衛賞作品「村へ」は、これがその源流になっているのではと思う。

白岡順氏は、列車の窓から見える風景を、ただ機械的に納めるのみの写真でその答えとする。

恣意というものを持たない究極の客観性。そんな写真の数々も同時に展示されていた。

このキャンペーンから有形無形の刺激を受けた写真作家たちが、それぞれの答えを求めて彷徨った軌跡がそこにある。



今から50年近く前、確かに時代の空気を捉え、これを動かし、人々に思索の場を与えた一大キャンペーンがあった。

それから時は流れ都市と地方の同質化は、かつての想像を遥かに超えて進んだ。

当時テレビだけだった「バーチャルなもの」は今や世に溢れ、リアルとの境目すら分からなくなりつつある。


「国鉄のライバルは、テレビでしょう。」という言葉の意味は、時を重ねて遥かに重くなっているような気がする。



「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン」は11月9日までやっているようなので、

遠くなった時代の、今も色褪せぬ感性とエネルギーにとっぷり浸りたい人にはオススメである。



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図録より




HPはこちら
「風太郎の1980年田舎列車の旅」

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[ 2014/10/24 21:09 ] 日々雑感 | TB(0) | CM(6)

いい日旅立ち

こんばんは。

ディスカバージャパンは私も記憶の断片に残っています。
まぁ。小学生でしたので、その芸術性までは解りませんでしたが、国鉄のキャンペーンと言う事で、単純に好きでした。
因みに、「いい日旅立ち」の流れるCMもこのキャンペーンの一環だったのですかね?
ニューブルートレイン(24系ですかね?)が流れるように走る姿が今でも印象に残っています。
[ 2014/10/24 22:30 ] [ 編集 ]

「いい日旅立ち」

いぬばしりさま

「いい日旅立ち」は、「DISCOVER  JAPAN」が1976年に終わった後、
後継キャンペーンとして1978年から始まった、全くの別モノです。

山口百恵の歌はそのキャンペーンソングなのですが、ありがちなCMソングと一線を引く為それは周到に準備され、
歌詞に宣伝臭さを一切入れないばかりか、最初にレコードが出て、おもむろに広告が追いかけるという策をとったようです。

これは特に広告のムーブメントとして話題になる事は無く、山口百恵だけが目立った企画になったようですね。
既に国鉄は死に体で、かつてのチャレンジングは息を潜め、
またオイルショック以降の価値観の多様化は、「ブーム」という存在を消してしまったようです。

そういう意味でやや醒めた企画だった「いい日旅立ち」ですが、百恵に助けられてか1983年まで続いたそうです。
まさに風太郎の放浪の旅と同時代! 確かにこのテーマソングと共に津々浦々を旅した気がします。
[ 2014/10/24 23:23 ] [ 編集 ]

風太郎 様

私はJR以前の国鉄のことはよく分かりません
主題に関してではなく 恐縮ですが・・・
今回のアップの感想を述べさせて頂きますね

風太郎様の文章能力の高さです
説明能力の高さです
鉄道を愛するがゆえのことでしょう
長文に渡る記事
詳細に調べられてもいます
以前の記憶を確かめながら 書かれたのだと思います

それ自体に感嘆しました
[ 2014/10/25 20:03 ] [ 編集 ]

写真表現

りら さま

いやだらだらとした駄文を読んでいただき有難うございます。
気のままに書き散らすのは好きなのですが、やっぱり心動くものに接すると筆が進むところもありますね。

鉄道を愛するというより、写真表現が好きですね。被写体は何でもいいんです。
後段の写真論の部分は展示に書いてあったことの受け売りですね。
北井一夫さんなんかは別に鉄道を撮る人ではないのですが、風太郎の写真に大いに影響を与えた作家なので、
こんなところで繋がっていたかと、改めて感銘を受けた次第です。
[ 2014/10/25 21:37 ] [ 編集 ]

鉄ちゃん人生原点

風太郎さま

勿論、当時は単なるガキでしたので、辞書で調べたのか、人から教えられたのか忘れましたが自分なりに
ディスカバージャパンを解釈して、それを発見する旅を始めましたね!
その一番最初に発見したのは、山陰の海と絶妙に
絡み合う鉄路でした。それ以来「日本海」が我が心の海となりました。
それと旅先での人との出会いも、旅の目的そのものになっていたように思います。ある意味一宿一飯の恩じゃないですが・・・要するに日本のどこかに
自分を待ってる人が居る的な。
さらに「一枚の切符から」始まる旅。
時刻表を捲って計画をし、窓口で1カ月前に入手するという時の
ワクワク感も旅の醍醐味の一部だと。
賛否いろいろですが、電関人の中では自分のスタイルとして
それぞれの国鉄CPが咀嚼されております!
[ 2014/10/26 09:15 ] [ 編集 ]

「DISCOVER  MYSELF」

狂電関人さま

旅という、結構な対価を必要としながら、具体的なカタチを持たない、
故にその価値の評価が揺れる行為に、少なくとも風太郎自身を一歩踏み込ませたのは、
当時の国鉄キャンペーンの影響もあった事は確かでしょうね。

都会からどこか地方を見下した「上から目線」も無かったとは言えませんが、
都会と地方は明らかに同質でないものがまだまだ残っていた時代ですし、
ローカル線の懐に飛び込んで、鉄道のみならず僅かでもその土地の日常に接し、
人間、どんな土地や境遇であっても、様々な生き方があるという事を学ばせてもらった気がします。

本当に付けたかったキャンペーン名は「DISCOVER  JAPAN」ではなく、「DISCOVER  MYSELF」だったとも聞きます。
風太郎にとっては、確かに「DISCOVER  MYSELF」な旅でありました。

バーチャルではない旅がいつまでも生き残る事、
そして「発見される」側も、安直なマーケティングに迎合しない誇りを忘れないでいただきたい、というのが願いであります。
[ 2014/10/26 11:59 ] [ 編集 ]

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