レンズ沼のほとりで    Ai micro nikkor 55mmF3.5

55mmmicro1b.jpg
   
   Ai micro nikkor 55mmF3.5





再び古ニッコールの話。暫く前の購入ではあるが。

中古屋で前から気になっていた「micro nikkor 55mmF3.5」の出物を発見してしまう。

英世8枚は相場より随分安く、「カニの爪」が欠品になっているのが災いしたかと思うが、

光学系は清掃済みとの事でピカピカ、カビ跡等認められず。鬼門のヘリコイドも快調と来れば、放って帰れば後悔しそう。

しかしニコンF時代の設計だ。もしも糞レンズだったらというリスクはあるが、

その際は「カニの爪」をどこかで調達して売っ払えば英世5枚は期待出来よう。

何だ、足裏マッサージ1回分の授業料で済むじゃないかと素早く計算して、目出度く購入。

「カニの爪」は早速取りつけた。

無用と分っていても、かつてニッコールに別格の憧れを持っていた世代としては、このエンブレムは無きゃいかんのだ。



このレンズが気になっていたのは、「カチカチ山」とも称されるコントラストの高さと、

無限遠まで含めた解像力の高さがハンパないとの評をよく耳にするからだ。ニコンの小冊子でも設計技術者の、

「ニコンF時代のレンズですが、D800とかで撮ると物凄く良く写りますよ。まるでこういう時代が来るのが分かっていたようです。」

などというお言葉も聞けば、どの程度「分っていた」のか確かめたくなるじゃないか。



設計は1961年というから正に風太郎と同世代だ。以来数度のマイナーチェンジはあったが基本設計は不変。

「クセノタール」と名が付く古典的な左右対称に近いレンズ構成で、4群5枚のごくシンプルなもの。

左右対称なレンズ構成は光学の原理として理想形だし、諸収差の補正さえ出来ているなら

レンズ枚数は少ない方がよりクリアな光が届くはず、という考えに立てばやっぱり理想に近いはずなのだが。



クセノタール 構成
クセノタール



外見は前枠から4cmは奥に引っ込んだ前玉が特徴。

これならフードなんぞ要らないじゃないか、と、ものぐさな風太郎としては嬉しい。しかし問題は「写り」である。


試写してみたら、ぶっ飛ぶ。

無限遠撮影の解像力において、一段絞ればすこぶる評判のいい最新Gレンズ、50mmF1.8を隅々まで超える。

天下の「プラナー50mmを絞った時」と比較しても、同f値ならムムムと唸る程解像力は「同等」だ。これには参った。

コントラストは「カチカチ山」の評判通り。嫌な硬さでは無いが、ハイライトは飛び気味になるので露出は注意が必要。

本業のマクロ域は普段風太郎はあまり使わないのでなんとも。ボケ味の硬さも言われるが、それも良く分からん。

マクロ云々より、高解像、高コントラストを生かして無限遠でバーンと撮ってみたいと、ソノ気にさせる玉だ。


レンズの設計技術そのものはとうの昔に飽和していて、後は硝材の違いとかでしかないとも聞くが、

50年以上前の設計が最新レンズに勝つような絵を叩きだすのは痛快でもあるし、光学設計というものの奥深さを改めて感じるところ。

おなじく「古い設計」となった風太郎も、まだまだ若いモンに負けちゃならぬと頑張らねば。


春の「わたらせ」。

打ち捨てられた鉱山施設のテクスチャーも、逆光に映える花桃も、「クセノタール」がバシッと捉えてくれた。




(共にNikon D800E micro nikkor 55mmF3.5 で撮影)

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   足尾鉱山跡


watarase20140426_222take1b.jpg  

   わたらせ渓谷鉄道   神戸       2014年




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[ 2015/03/25 22:40 ] 写真道具 | TB(0) | CM(6)

:風太郎様

記事最後まで拝読しました
私にはレンズのことは よく分かりません
でも 風太郎様がこのレンズがお気入りだということはよく理解できます
初恋の人と巡り合ったかのごとくですね
お互い 年輪を重ねても やはり憧れは永遠だったのでしょう

わたらせ渓谷鉄道 昨年撮影されていましたね
2枚目 俯瞰撮影された 気動車のその色に 私は魅了されます

1枚目 足尾銅山公害
それを想わずにはいられません
それは今だ終わってはいないように思えます
[ 2015/03/26 07:17 ] [ 編集 ]

マイクロ55㎜

風太郎さま

まったく、この玉もお持ちでしたか・・・(笑)
電関人も、休鉄時代に購入してたまに遊んでます。
オカハチロウのように超奥目ですよね!(爆)
[ 2015/03/26 12:45 ] [ 編集 ]

解像

りらさま

人間の目玉の解像力もなかなか侮れないとは思いますが、目玉の解像力を超え、
遠景の花びらの一枚一枚が分離して見えるほどに達すれば、それはやはり写真の凄みであり説得力の源でもあります。
解像が全てでは無いという観点も大いにありましょうが風太郎はそれに拘りたいですし、
複雑怪奇な光学計算をほぼ手作業に頼ったレンズが、現代のスーパーコンピューターを駆使したレンズを超えるのは小気味いいものです。

足尾銅山、今は萌える草木と可憐な山桜に埋もれようとしています。
歴史もまた旺盛な大自然に飲み込まれようとする様に、感慨も抱きつつ。



[ 2015/03/26 19:30 ] [ 編集 ]

50mm域

狂電関人さま

噂の銘玉を極力安く、細々とですよ。
50mm域はプラナーか、マイクロかでレギュラーを争っています。
マイクロは暗いですが、いざという時マクロOKというアドバンテージがありますからねえ。
苦手だった50mm域もこのところ愉しくなって来ましたあ。
[ 2015/03/26 19:37 ] [ 編集 ]

レンズ設計が計算尺やソロバンから電動式の卓上計算機に変わったころでしょうか、レンズ設計のために何十人も事務員が机に向かっている写真を見たことがあります。
私が憧れのニコンFを手にしたのが今から50年ほどまえですからほぼその時代なのでしょうね。
スーパーコンピューターを駆使して設計する現在のレンズにひけを取らない50年前のレンズ、日本人ならではの職人技を感じます。
名レンズにひけを取らない名文に感動しながら読ませて頂きました。
[ 2015/03/27 09:42 ] [ 編集 ]

一芸


はせがわさま

手計算から生まれたレンズは平均点が高い優等生では無いのかも知れませんが、
鮮やかな切れ味の一芸を持っているような気がしますね。
そんな「芸」を引き出すのも使い手の力量と思いつつ、
どんどん増えて来る古レンズの重量に耐える体力も養わねば、という今日この頃であります。
金属とガラスの塊の重量感と美しく彫刻された標記類を眺めるだけで、
いい写真が撮れそうな気がしてくるのも不思議です。
[ 2015/03/27 22:08 ] [ 編集 ]

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