シュマリ

シュマリb





手塚治虫の「シュマリ」を読む。

「ビッグコミック」誌上において1974年から76年にかけて連載というから、もう40年前のマンガという事になる。

このマンガとは不思議な縁があって、連載当時何故か最終回だけ読んでいる。

その頃風太郎は中ボーで、多分床屋の店先あたりではと思うのだが。

綿々と続いた2年分の連載を全く読んでいないのだから何の事かさっぱり分からなかったのだが、

果てしなく続くような北海道の大地と空に向かって、何かを呼びかける一人の女性を描いたラストシーンは妙に印象に残って、

出来ればどんな話なのか最初から読みたいと思って幾星霜、やっと手にした次第。

件のラストシーンは数ある手塚作品の中でも指折りの名場面と評されているのは、読んでから知った。


明治維新直後から日清戦争位までの北海道を舞台にした「大河ドラマ」である。

没落士族という和人でありながらアイヌ名を名乗る豪傑漢「シュマリ」が主人公。

逃げた女房を追って北海道に住みつき、原始の色濃い北の大地に開拓の鍬を振るう。

雲のようなイナゴの大群や野ネズミの群れ、暴風雪や大洪水のたびに全てを失いながらも、不屈の魂で立ち上がる。

開拓時代の北海道の荒ぶる自然の凄まじさをいやと言うほど見せつけられる前半。

やがて押し寄せる「国家」と「文明」にドンキホーテの如く抗うも次第に追い詰められていくシュマリの、孤独な戦いと悲しみを描く後半。

逃げた女房の他にもう一人、見事な「二股愛」も重要なストーリーなのだが、複雑に絡み合う男と女の機敏が見え隠れして飽きさせず、

くっついた離れたの些細なラブストーリーなど一蹴するような、骨太で普遍の愛を謳うラストにはやられた。

結局上下巻で厚さ10cm近い大作を一気に読んでしまった次第。


まるでアメリカ西部の開拓時代を地で行くような日本史の中でも特異な位置付けを持つ時代という事が良く分かるし、

土にまみれる開拓農民、一攫千金を夢見る山師、命懸けの炭鉱夫、追い立てられるアイヌ人、権力闘争に明け暮れる中央政府といった混沌のなかで、

近代国家というものが虐げられる弱者の犠牲のもとに成立していった過程を描いている。

同時代を描いた「坂の上の雲」が近代国家への坂を駆け上がる過程の、あくまで「表」の英雄を描いたのに対し、

「シュマリ」はフィクションではあるものの、北辺の地の混沌の中に数多く存在し、歴史の闇の中に消えていったに違いない、名も無き「裏」の英雄譚である。


しかし手塚治虫の絵は、今の目線で見ると結構雑なタッチなのだけれど、それでいながら深い情念を宿らせるのは、

カット割りや行間・絵間?を読ませる上手さだなあと。

第二次大戦を舞台にした「アドルフに告ぐ」も凄いと思ったが、こういった歴史大河ドラマの秀逸さはもっと評価されてもいいと思うし、

「映画的な表現に留意した」という絵を見るにつけ、本当に映画化されないかなあと思う。

似たようなテーマの映画「北の零年」も見たが、話のスケールも奥深さもこっちの方が全然上。

荒ぶる自然の猛威などかつては映像化不可能とされたに違いないが、現代のCGならたやすい事だろうし。


蛇足ながら地理的な舞台は、前半はどう見ても山線沿線、仁木から然別あたりにかけてと思われるし、後半は札沼線当別から江別あたりにかけてか。

この間行ったばかりの場所だからそういう点でもドキドキしてしまった。先に読んどきゃ風景も違って見えたかも。



写真は直接ストーリーに関係ない土地ながら。


「シュマリ」の生きた時代は遠くなった。

でも北海道を旅すると原始の息吹を湛えたその時代を、垣間見るような一瞬に出会う事がある。





_DSC4205美幌峠2012take1b
  
   北海道 美幌峠      2012年



douhoku201208_019音威子府2012take1b

   北海道 音威子府村 天塩川      2012年





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[ 2015/04/02 21:32 ] 日々雑感 | TB(0) | CM(2)

:風太郎様

二枚のお写真の中 列車を一生懸命に探してみました
風太郎様のお写真は 構図の中 列車が小さく走ってる時が多いでしょう
だから 見過ごすことがないようによくよく見てみました ありませんでしたね

1枚目
雪の中から植物が顔を出しています
それは 空にある月を見上げているかのようです

二枚目
天塩川と天空が一体化されています
周りのシルエットになった部分 それが一層 そのように感じさせます

風太郎様
景観写真 また見たいです
2015年 初めてのお願いね
二回目 三回目もあるかもです

手塚治虫の「シュマリ」長い記事ですね
でも 最後まで読ませて頂きました
手塚治虫さん 日本のコミックの道を切り開いたような偉大な方なのでしょう
それ以上はよく知りませんが 風太郎様の熱い想いは伝わりましたよ
最後に報告です
私の明日の記事もコミックです 予約投稿済です
コミック繋がりでびっくりしました
[ 2015/04/02 22:24 ] [ 編集 ]

いにしえの北海道

りらさま

探しましたか。それはお手数をお掛けしました。
ロングショットの大風景に列車を小さく配するのは、大自然に抱かれた鉄道を感じさせて好きではありますが、
列車が風景に埋没してしまい、探さなくてはいけないようでは列車を入れる意味が無いと思っているので、
入れるならすぐそれと分かる入れ方をしますよ。ぱっと見、居ないと思ったら本当に居ないですヨ。

冬の美幌峠は人を寄せ付けないような風雪の頂きです。強風が雪面に風紋を作っていますね。
天塩川は太古の北海道の川はかくやと思わせる様な、手付かずの自然が残る最北の大河です。

「シュマリ」が映画化されるなら、こんな映像に埋め尽くされるのではと夢想しています。

風景写真は大量にあるので、鉄道モノの流れを切らさない程度にUPしていきますよ。
[ 2015/04/02 23:41 ] [ 編集 ]

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